2006年 09月 08日
今回の投稿は、僕の個人的な好みで、おそらく誰の同意も得られないような気がしています。 僕は物心がついた頃から、クルマが大好きになりました。 以前に、書かせて頂いたように、クルマの助手席に乗って、コラムシフトのレバーを、1速、2速、3速・・・と動かして遊ばせて貰うのが大好きでした。 クルマで日光、箱根、伊豆、長野、山梨方面と旅行に行った思い出があるとも書きました。 僕の記憶では、クルマでドライブに行くと、必ず数回の途中休憩がありました。 路肩にクルマを停めて、フロントボンネットを開けた状態で、休憩した記憶ばかりです。 どのクルマに乗っていた時でも、『オーバーヒート』と、『エンジンブレーキ』という言葉が車内で、頻繁に交わされていたので、『オーバーヒート』と、『エンジンブレーキ』という自動車用語が、僕が最初に覚えた自動車用語なのかもしれません。 クルマに対して、好奇心旺盛だった僕は、『オーバーヒート』と、『エンジンブレーキ』について、クルマに乗せてもらう度に、聞いていた記憶もあります。 つまり、クルマは長く乗っていると、お湯が噴出し、ブレーキは、長く踏み続けてはイケナイものだと、子供なりに覚えました。 『どうして、お湯が噴出すの?』とか、『どうして、ブレーキは長く踏み続けては、イケナイの?』とか、いま一歩、踏み込んだ質問が出来るような子供であったならば、今現在の僕は、違った方向に行っていたかもしれません。 というのは・・・。 僕には、子供が三人いますが、小さい頃に、『どうして?』とか、『なんで?』とか、『なぜ?』とか、ウルサイほど、頻繁に聞いた子供のほうが、成績が良いということに気付いたからです。 高校3年の時に、同じクラスだったK君は、今でも仲良しの親友です。 彼は、授業中の先生の講義で、自分が判らなくなった場合には、その理解出来ない箇所を、質問攻めにしていました。 先生と、K君の個人授業が、50人弱ほどのクラスの授業の中で、行われていました。 K君以外のクラスメートは、雑談という楽しみを得ることになるので、これはこれで、大歓迎でした。 K君の長時間の質問のために、授業時間が終わってまったことも数回ありました。 中間テストや、期末テストが始まると、クラスの10数名で、K君の家に、合宿に行くことが恒例となっていました。 K君の部屋には、黒板が置いてあって、K君は教科書も見ないで、テストで出題されるであろう箇所だけを、順次説明していきます。 僕等10数名は、その黒板に向って座って、K君の復習授業を受けていました。 僕等の高校は、某大学の付属高校でした。 その付属高校から、大学に進学できるのは、上位何名まで、というような仕組みではなく、単純に、全科目の平均点が、60点以上あれば、進学できるという仕組みでした。 K君は、人に教えて、自分は確認するという、勉強方法が好きだと言っていましたが、K君は、とてもクラスメート思いだったので、進学が危ぶまれる僕等を教えていたことは、間違いがないことだと、今でも思っています。 こんな方法で、勉強をしていたK君は、学年500人中でベストスリーには、必ず入るうような優秀な成績の持ち主でしたが、授業以外の勉強はしないという人でもありました。 話しが、またまた逸れましたが、『どうして?』とか、『なんで?』とか、『なぜ?』とかを考えたときに、K君のことを、思い出してしまいました。 そうやって、中間テストや、期末テストの勉強をしていた僕等でしたが、いざテストの時間になると、自分の答案用紙が、何処に行ってしまっているのか、自分でも判らなくなるほど、皆なで助け合っていました(笑)。 高校時代の親友とは、今でもとても仲が良いのですが、僕を筆頭に、誰一人として出世していないようです。 15歳から18歳という多感な時期に、成績による競争ということを、全く経験してきていないので、人より上になるということが、凄く苦手なのだと思っています。 仕事で、たとえライバルがいても、共存出来ないかなぁ~と、考えるほうなので、気がつけば取り残されているという友達ばかりです。 これで良かったのかという疑問は、大きく残ってはいますが、仮に産まれ直したとしても、もう一度、あの高校に行きたいと思っているので、やっぱり競争は苦手なのだと思っています。 そんな競争心のない、思い出深き高校ですが、僕の息子は現在3年生で通っています。 K君は、母校の教授兼学部長に納まっていて、いまや教え子の仲人も、100組超えとのことです。 そんな、K君と会うたびに、思うことがひとつだけあります。 それは、K君が、なかなか老けていかないことです。 彼の仕事は、大学教授なので、20歳前後の生徒とだけ、延々と一緒にいるからではないでしょうか。 彼が年を重ねていっても、教える対象の生徒だけが、毎年入れ替わって行き、その対象年齢だけは変わっていません。 彼の生徒である、20歳前後の人達は流行に敏感です。 大学を、卒業して行き、社会人になり、結婚して家庭に入り・・・段々と、流行から取り残されている、自分に気付くことになります。 K君は、流行に乗っているということも、今の流行はなんだと、意識することもなく生活しているので、若さが保てるのではないかと思っています。 若い人と、話しが合わなくなると、自覚しだしたら、注意が必要ということかも知れませんが、僕は既に手遅れです。 話は戻ってクルマの話しです。 僕が、子供の頃に乗ったクルマは、そんな感じで、オーバーヒート気味になるので、ドライブの途中に、路肩にクルマを停めていました。 僕は、子供ながら、クルマが大好きだったので、クルマとは、人間の思い通りに成らなくて、クルマに乗るということは、人間がクルマに合わせるものだと、疑うこともなく思い込んでいました。 月日は流れて、高校3年の夏休みに、僕は自動車免許を取得しました。 僕は、高校生に成ってからは、人に誉められたということが殆どない人でした。 小学生の頃の暗算と読書感想文、中学生の頃の写生大会の絵と工作ぐらいと、誉められたことは、過去の栄光にすがる人でした。 僕の人生の中で、一番誉められた経験が、この夏休みの自動車教習所でした。 中学の頃に、あんなイケナイ遊びに没頭していたので、自動車教習所の敷地内にある、仮想道路で運転することは、とても簡単なことでした。 教習所には、誕生日前の17歳の時から、通い始めました。 『なんで、こんなに運転が上手なぁんだ?』 と、最初の教官に聞かれました。 僕は隠してもしょうがないと思ったし、早く教習所を卒業したかったので、 『かくしかじか・・・そんなワケで』 と、説明しました。 その教官との話しが、他の教官にも伝わり、僕は教習所内の有名人になりました。 僕に教習しようとするよりも、僕の運転技術が、どのくらいのモノかを、知りたがる教官ばかりでした。 坂道発進の時も、当然の如く一発で決めてしまうので、 『バックでも出来る?』 僕は、上り坂で通常の坂道発進をして、坂の頂上を越えて、下り坂の途中で、クルマを停めます。 そしてバックギアに入れて、あえてサイドブレーキも使用せずに、バックでの坂道発進をしてみせました。 S字もバック走行、クランクもバック走行、縦列は頭から、車庫入れも頭からと、教習所では逆さまなことばかり、試されていました。 今の仕組みは判りませんが、当時は、27時間の実技と、30時間の講義が教習所の受講内容でした。 27時間の実技は、17時間の所内運転と、仮免取得後の10時間の路上運転に分かれていました。 僕は、『あとで、2時間乗りなさい』と言われて、15時間で仮免許に合格しました。 路上に出てからは、 『スピードの出し過ぎ!』 『また、勝手に車線変更した!』 『追い越しちゃダメだってば!』 と怒られてばかりいましたが、10時間で合格しました。 最終的には、所内の、あとの2時間は乗らなくてもよいことになったので、僕は自動車教習所を25時間で卒業しています。 教習所は楽しかった思い出ばかりで、年上になる短大生の彼女にも巡り会いました。 そんな彼女が、このブログを発見することになるのですから、世の中って不思議なものですね。(オジンになった僕と、オバンになったであろう彼女は、とても離れたところにいるので、顔を合わせるという意味での、本当の再会はなさそうだけれど、彼女がZ4に乗っていることは、僕には、とっても嬉しいことになるのです。) 免許取得後の僕の最初のクルマは、6年落ちの、白の510ブルバードSSSでした。 助手席のシートのリクライニングが、壊れかかっていて、何かの拍子で、突然としてシートの背もたれが倒れるクルマでした。 助手席に女の子を乗せていて、倒れて欲しい時には倒れないで、倒れて欲しくない時には倒れるという、僕の思い通りには、なかなか、いかない壊れ方だったので、鉄骨屋さんに持ち込んで、溶接して修理して頂きました。 タコメーターが動かなくなったり、シフトレバーが外れたり、窓ガラスが動かなくなったりと、沢山の不具合はあったけれど、走行中に停まったりしはしない、上出来のクルマでした。 大学に進んで暫くすると、僕は、手当たり次第にクルマに乗ることになるのですが、それは、どれもこれも、気持ちが良いほど壊れました。 バッテリーが弱っていて、セルが回らないのは当たり前でした。 坂道を利用しての、一人押しがけを、マスターしたのも、この頃でした。 当時は、バッテリーは高価なものだったので、予備を持ち歩くことは出来ませんでした。 バッテリーが弱ったクルマを、他のクルマと、ブースターコードでつないで、エンジンを掛けて、出発した後は、神のみぞ知る!そんな感じで走っていました。 (そもそも、予備のバッテリーを持ち歩くということ自体が、僕だけの感覚なような気がしています) ヘッドライトは薄暗く、ガスペダルを踏むと明るくなるというぐらい、バッテリーの寿命は尽きているので、夜はなるべく走らず、昼間はなるべくブレーキを踏まずで走っていました。 ブレーキを踏めば、テールライトが点灯するので、その僅かな消費を抑えて走っていたワケです。 当時のスポーツカーは、ボルトメーターや、アンメーターが装着されていたので、これだけを頼りにして、走っていました。 高回転ばかりを、使って走っていれば、ボルトメーターの針は、12ボルト以上を指し、アンメーターの針は、プラス方向を指します。 アイドリングの状態では、ボルトメーターの針は11~12ボルトを指して、アンメーターも針は真上のプラスマイナス・ゼロ位を指していました。 信号待ちで、停まっていてウィンカーを点滅させると、ウィンカーに合わせて、カチカチと、ボルトメーターの針は、10ボルトぐらいまで落ちたり、戻ったりしていました。 アンメーターの場合は、マイナス方向にカチカチと振れていました。 ガスペダルを踏んで、空ぶかしをして、ボルトメーターや、アンメーターの針が、プラス方向に振れれば、ダイナモや、オルタネーターが壊れていなくて、バッテリー自体が弱っているだけなので、僕は臆することなく、何処にでも走っていました。 (時として、バッテリーターミナルが、塩を噴いていて、接点が悪いこともあるのですが、概ねはバッテリー自体の弱りでした) こんなふうに、バッテリーが弱っているクルマであっても、僕は、何処にでも走って行きました。 ただ、道路で駐車してしまう場合は、下り坂付近に駐車し、有料駐車場に預けるの場合ば、渋谷西武百貨店のような、立体駐車場にしていました。 停めてはイケナイ路上は細い路地で、停めてはいけない有料駐車場は、新宿アドホックのような地下駐車場でした。 僕はこのように、エンジンが、バッテリー上がりで掛からなくなるという前提で、駐車場所を選んでいました。 駐車しておいたクルマのバッテリーが死んでしまい、最悪の事態に陥った時には、運転席側のドアーを空けておいて、クルマを手で押して、出来る限りの速さで走ります。 ある程度のスピードになるか、下り坂に突入するところで、ドライバーズシートに乗り込んで、素早くクラッチを切って、2速に入れて、スピードが乗ったところでクラッチを離す・・・これで殆どエンジンは掛かります。 必ず下り坂が、利用できるように、駐車するようにしていました。 僕が好きだった、MGやトライアンフは、1トンを越えない軽いクルマでした。 そして、何よりも、押し掛けするという作業には、屋根がないオープンカーということが、一番便利なことでした。 駐車しておいて、戻ってみれば、エンジン下に、ラジエーターの水が溜まっている。 当時は、ラジエーター自体が破れて、漏れている可能性は少なく、こぼれて溜まっている水の量で、アッパーホースの破裂なのか、ロアホースの破裂なのかを想像したりして、楽しんでいました。 クルマのパーツで、進歩したものを挙げなさいと言われたならば、ゴムホースと、答えてしまうほど、昔のホースは弱かったです。 ラジエーターの水が溜まっているのが、アッパーホースや、ロアホースの膨張による破裂ではなくて、ウォーターポンプからだったりすると、自分の手には負えないというショックよりも、お金が掛かるというショックの方が大きかったです。 チョークがあるクルマが当たり前の時代なのですが、ツインキャブや、トリプルキャブのクルマで、チョークを引きすぎて、プラグをかぶらせたり、エンジン始動後に、チョークを戻すタイミングを読み間違えてしまい、またまたプラグをかぶらせるなどということも、頻繁にしていました。 こうなると、プラグが乾くまでは、絶対にエンジンは掛からないので、プラグを外して掃除するか、もしくは翌日まで待つということになります。 僕は、こういう面倒なクルマが好きなのですが、プラグの掃除は面倒なので、翌日まで気長に待つタイプでした。 オートマチックのクルマは、押し掛けが出来ないので、僕の好みではなくなっていました。 ただ、アメ車は、もともとバッテリーに依存しているオールパワー(パワーウィンドウやエアコン)のクルマなので、バッテリーが早めに交換されていて、そのうえ、バッテリーの容量も大きいので、バッテリー自体が弱っている固体が、少なかったのも事実でした。 最悪なのが、数年落ちのクラウンや、セドリックといったクルマでした。 快適装備のオールパワーなのですが、標準装備のバッテリーの容量が小さいので、夏を終えた今頃の季節になると、危なかっしいクルマに変貌します。 夜のヘッドライトは暗くなってくるし、昼間はエアコンを入れたまま信号で停まると、エンジンストールしてしまいます。 もっと最悪なのは、横断歩道のあるような交差点で、周囲に注意しなから、ゆっくりと曲がり始める場合です。 パワーステアリングのポンプが作動することによって、より負荷が掛かかるので、曲がりながらエンジンがストールしてしまいます。 これを避けるために、右足でガスペダルを強めに踏んで、エンジンの回転数だけ上げておいて、左足でブレーキを、強めに踏んで速度調整をして曲がります。 ブレーキと、ガスペダルの双方を、強く踏むのがコツなのですが、こんなことを、今のクルマでしたら、怒られそうですね。 僕が、今でもオートマチックのクルマを運転する時に、左右の両足を使うのは、この当時の楽しさを思い出しているからです。 今のクルマは、キーを、アクセサリーの位置まで回しても、フエールポンプが作動する音が、聞こえてきません。 昔は、フエールポンプからのジーという音色が、聞こえてきたので、フエールポンプが、クルマの何処に装着されているのかが、直ぐに判りました。 ジーという音が大きく聞こえ出したら、フエールポンプが寿命に近づいている場合が多いのですが、フエールポンプが、どこにあるのかは、判っておいた方が便利でした。 僕はバイトで、ワーゲンポルシェ914をア●アンか、ノ●ノンの撮影協力で、迎賓館前まで持ち込んだことがありました。 ファッション雑誌の撮影ですから、可愛いモデルさんが、数人待ち構えていました。 ワーゲンポルシェ914は、着飾ったモデルさんの背景としての小道具として使われました。 数時間で、数万円という効率の良いバイトで、当日払いでした。 僕は、あぶく銭が入ったので、モデルの子を誘い、一緒に帰ることになりました。 実は、その日に持ち込んだワーゲンポルシェ914は、フエールポンプが、壊れてかけていました。 迎賓館に向う時にも、時として、作動しなくなってしまい、ガソリンがエンジンに送られないので、走行中に停まっていました。 ワーゲンポルシェ914のフエールポンプは、左リアのタイヤハウス内の前方にあります。 僕は、頭の小さな鉄製のハンマーを、助手席に載せていて、エンジンが止まってしまうと、その都度降りて、その頭の小さな鉄製のハンマーで、フエールポンプを、叩いていました。 カンコーンという、甲高い音を鳴らして叩き、ドライバーズシートに座って、エンジンが掛かるかを確かめます。 エンジンが、掛からない時には、また降りて、頭の小さな鉄製のハンマーで、カンコーンという甲高い音を鳴らして叩き、またドライバーズシートに座って、エンジンが掛かるかを確かめます。 これの繰り返しをして、迎賓館前まで、走って行きました。 バイトの帰り道は、可愛いモデルの子との楽しいドライブです。 多分、こういう初めてのデートの場合は、普通の人は、フエールポンプが壊れないことを、期待するのでしょう。 僕は何故か、壊れることを期待していて、ワーゲンポルシェ914を、御殿場方面に向けました。 (これは、首都高速の料金が200円か300円で、用賀から御殿場までの東名の料金が700円か900円の遠い昔のお話です) あまり、早く壊れてしまうのも、僕の意に反することなので、快調に走っている、ワーゲンポルシェ914が、とても頼もしく思えました。 僕にとって、都合の良い場所で壊れてくれることを、僕は密かに期待していたのでした。 『壊れても絶対に叩かないぞ!』 僕は、こう固く決心して、御殿場から山中湖に向ったのでした。 東名から、山中湖に向って行くと、山中湖に突き当たる、Tの字交差点に出ます。 そのTの字交差点の角には、山中湖ホテルがあります。 僕は、そのTの字交差点の手前で、ワーゲンポルシェ914が、壊れることを期待して走って来たのでした。 Tの字交差点までは、もう直ぐです。 『フエールポンプよ、壊れておくれ!』 ゆっくり走って、調整までしています。 『フエールポンプよ、壊れておくれ!』 Tの字交差点まで来てしまいました。 『フエールポンプよ、壊れておくれ!』 仕方がないので、ワザとエンストまでしました。 『エンジンよ、掛からないでおくれ!』 パタパタ、パタパタ、全く快調なエンジンで、このうえなしでした。 環八から、迎賓館までに行く間の10キロほどの間に、数回壊れた、フエールポンプは、迎賓館から、山中湖まで走っても壊れないのです。 最後のチャンスは、山中湖ホテルで食事をして、ワーゲンポルシェ914から、離れてみることでした。 食事を楽しんだ僕等は、ワーゲンポルシェ914に乗り込みました。 『エンジンよ、掛からないでおくれ!』 パタパタ、パタパタ、全く快調なエンジンで、このうえなしでした。 夜も更けたし、フエールポンプも、壊れないので、僕は彼女を自宅まで、送っていくことにしました。 彼女の家は、恵比寿駅と、山手通りの中間付近の場所にありました。 『よっていく?』 『夜も遅いからいいよ。』 『親も起きてる時間だから、まだ大丈夫・・』 『それじゃ~あ、チョットだけ・・』 彼女の家は、凄い豪邸でした。 考えてみれば、この付近には、芸能人も沢山住んでいる高級住宅地でした。 ガレージには、縦目のベンツが納まっていました。 1時間ほど、お邪魔して、僕は帰ることにしました。 やや広めの、彼女の家の前の道路に停められた、ワーゲンポルシェ914は、駐車違反にもならずに無事でした。 (当時は、22時以降の路上駐車が認められていた道路が多かったのです) 僕は、ワーゲンポルシェ914のドライバーズシートに座って、エンジンキーを回しました。 カチカチカチ・・カチカチ・・・。 フエールポンプが、全く作動しませんでした。 僕は、ドライバーズシートの背もたれの後ろから、例の頭の小さな鉄製のハンマーを、取り出しました。 カンコーンという甲高い音が、寝静まった高級住宅街に鳴り響きます。 僕は、自分のしたことが、とても場違いだということに、気付いたと同時に、僕を見つめる彼女と彼女の母親の唖然とした姿を、今でも鮮明に覚えています。 『申し訳ありません、こうするとエンジンが掛かるようになるんです』 僕は、再び、お別れの挨拶をして、ドライバーズシートに座りました。 カチカチカチ・・カチカチ・・・。 フエールポンプが、全く作動しませんでした。 僕が、頭の小さな鉄製のハンマーを再び手にするより早く・・・。 『泊まっていきなさい』 と、彼女のお母さまがおしゃいました。 僕は、こうして、立派な日本間の客間に通されて、ぶ厚い布団に包まれて、眠りについたのでした。 次の日の朝になると、何事もなかったように、ワーゲンポルシェ914のエンジンは、掛かりました。 帰りがけに、修理工場に入院させました。 僕は、子供の頃から、クルマは壊れて、自分の思い通りにならないものだと思って来ました。 自分の思い通りにならなくて、時として、ご機嫌をそこねるのが、クルマの魅力だと思って来ました。 壊れてしまって、不動になるのは困るけれど、自分でも原因が判るようなチョットした不具合が起こるクルマに、僕は凄く魅力を感じてしまいます。 こんなことは、僕の個人的な好みで、おそらく誰の同意も得られないような気がしていますが・・・・、僕はもっともっと、書き続けたくなってしまったのです。
by seiuchi-porsche9
| 2006-09-08 18:22
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